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ナイン・マイルは遠すぎる

THE NINE MILE WALK

♪一番荒木が塁に出て 

タイトルはご存じ「燃えよドラゴンズ」の出だし部分です。
荒木が塁に出た!この時点で多くの中日ファンはほっと胸をなでおろします。なぜなら中日ファンにとって荒木が第一打席でヒットを打つかどうかは試合を大きく左右するからです。
荒木は強い固め打ち傾向があり、打つ日はとことん乱れ打つのに対し打たない日はさっぱり。この固め打ち傾向のおかげで彼はイチローを抜き1試合4安打を打った回数の日本記録を打ち立てました

次は♪二番井端がヒットエンドラン・・・といきたいところですが、あいにくそうはいきません。
2010年シーズン、井端は途中で離脱を余儀なくされ、25試合で英智が二番打者として起用されました。大変残念なことに13試合はメキシカンリーグMVPが二番を打っていました。
英智は打撃が苦手なので、ここは古き時代の燃えよドラゴンズの伝統に従い、送りバントを選択します。
しかしそれにより、さっき胸をなでおろしたばかりの中日ファンを新たなストレスが襲います。なぜなら、バットを寝かせた英智が突然変な踊りを始めたから
あらゆる事に独特の感性を持つ英智ですが、バントについてもそれは例外でなく、彼はピンクレディーの「UFO」イントロ部分の振り付けのようなクネクネした動きでバントを構えるのです。
早くも口さがないファンがこうつぶやきます。
早く英智はこの変なフォームをやめろ。こんなフォームで送れるはずがない

ここまで全て実話です。
そして実話では、このあと英智はバントを失敗します。口さがないファンは「英智はバント下手なんだから2番に置くには向いてないよ」と嘆きます。
本当でしょうか?
本当に、英智はバント成功率は中日の一般的な選手より低いのでしょうか?

・・・というわけで今回は先入観、いわゆる思い込みについて考えてみます。
この思い込みというのはスポーツを見るときどこにでもあるもので、実は英智が打席で踊り出す前にもひとつ潜んでいました。
それは荒木のヒットを見た中日ファンの反応。「荒木は固め打ちする」と思い込んでいる私たちは、第一打席でヒットを打つ荒木を見て、まだ見ないうちから以降の打席でもヒットを打つ荒木を想像しているのです。

このあと荒木が内外野の間にポテンと落ちるヒットを打ったとしましょう。
荒木の固め打ち傾向を知っている私たちは喜んでこう言います。「さすが今日の荒木は何を打ってもヒットになるな
ですが、もし第一打席で凡退して「今日はダメな荒木の日だ」と思っていたらどうでしょう?
やっぱり今日の荒木はダメだ、ヒットにはなったけど酷い当たりだった」と思うのではないでしょうか?
同じプレイを見ても、打つという先入観があると技ありのヒットとして記憶され、打たないという先入観があると実質アウトとして記憶されたことがお分かり頂けたでしょうか。

同じ刺激を受けても、先入観によって感じ方が違うことはすでに実験で証明されています。
1個1ドルのチョコレートトリュフだと聞かされてから食べたほうが1個5セントのそれだと聞かされてから食べるより美味しく感じること。
高級そうなカップで飲んだほうがコーヒーを美味しく感じること。美しいグラスで飲むとワインを高級なものに感じること。
実験に参加した人々はこうした動向を示しています。ちなみに私はヨウ素が検出されて以来、水道水をいっそうまずいと感じるようになりました

高級なレストランで料理が出るたんびにいちいちシェフが材料と調理法の説明に来るそうです。これは高級レストランとしての謎のプライドと義務感を満たす以外にも、高級な食材を手間かけて調理した美味しい料理だと刷り込ませることでより美味しく感じさせるという効果があるのです。
今やどこのレストランでもメニューを開くと「ウンタラとカンタラのナンチャラ風カンチャラ」みたいな長い名前の料理がありますが、こうした長いメニューでも「先入観で美味しく感じさせる」効果があるそうです。
なので、サイゼリヤのメニューに単に「ドリア」でなく「ミラノ風ドリア」が載っているおかげで、ミラノ風ドリアファンの私はだいぶ美味しい思いをしているはず。ちなみに以前ファンがこうじてイタリア人をサイゼリヤに連れて行ったことがあるのですが、その人は一口も食べないうちから「なんでや!ミラノ関係ないやろ!」みたいなことを言ってたので、あいにく先入観は働かなかったようです(逆にうさんくさく感じられてマイナスに働いたかもしれません)。

いったん野球に話を戻しますと、たまに出るテレビや雑誌で「一目見れば何を持ってる選手か分かる」みたく豪語するスカウトや評論家の人たちも、英智のダンスを見た私達のように先入観に左右されている可能性があります。
もはやこのブログで準レギュラーと化している『マネー・ボール』でも、体つきやフォームに惑わされて選手の実力が過大過小に評価される例が載っていましたね。
最終的にファンは選手の体とプレーを見てお金を払うので選手の体やプレーを見てスカウトすることは必ずしも間違いではないと個人的には思うのですが、先入観の働く領域であることは間違いないと思います。

さて、予想以上に私達が先入観に左右されている事が分かりました。この錯覚を何かに生かせないものでしょうか。
もしあなたがツイッターをやってるなら、この先入観をひとつ手軽に生かすことができます。
そう、アイコンによってイメージを操作するのです

昔「アニメアイコンの奴が何を言っても聞く価値はない」みたいなことを言って炎上した人がいましたが、これには一理あって、実写アイコンの方が真面目にツイッターをやっている人だと思われ、ツイート内容も真摯に受け取られる可能性が高く思えます。
もしあなたが自分の写真をアイコンにするのなら、帽子をかぶることはおすすめしません。あなたはテレビのニュースなどで登場する偉い教授や会社の重役が帽子をかぶっているのを見たことがありますか?私は原子力保安院の人以外は見たことがありません。あとフジテレビの朝の情報番組「とくダネ!」とか・・・まあヅラの話はもういいか
閑話休題、ハイレベルな内容の情報を発信する人は帽子をかぶっていないと一般に思われているでしょう。逆に、メガネをかけたりスーツを着たりすることは効果的かもしれません。

もっと手軽にやるならアニメやイラストのアイコンでしょう。
オープンで明るい人だと思われたいなら元気よく今にも飛び出してきそうな表情のアイコンにするといいでしょう。逆に落ち着いた人だと思われたいなら、静かに目を閉じたアイコンにするのがいいでしょう。

ツイートは、アイコンの印象で読まれます
全く同じ内容を言っていても、アイコンの印象によって文章から受けるイメージも変わります。
「そうはいっても長くやってたら化けの皮がはがれるでしょ?」と思われたかもしれませんが、そうではありません。なぜなら、イメージは蓄積するからです。
荒木の例を思い出してみましょう。
荒木は固め打ちするという先入観を持った人たちは、場合によって同じヒットを「ヒット」「実質アウト」として受け止めました。人は先入観によって、自分の先入観をより強化するような受け止め方をします

なので、もうツイッターをやっている方はもちろん、今からツイッターを始める方なんて特におすすめ。効果的なアイコン選びでツイートを引き立たせてみませんか?
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