ナイン・マイルは遠すぎる

THE NINE MILE WALK

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名探偵の条件(後編) 

前編の続きです。

今度は逆に好きな探偵の条件を語ろうとしたのですが、これがなかなかまとまらないこと・・・
しょうがないので嫌いな条件から演繹で嫌いな探偵が生まれているのとは逆に、私の中にある「好きな探偵ランキング」を参照しながら帰納法で彼らがランカーたる所以を導いてみました。

3位 走る

突然ですが画面の前の貴方は1日にどれくらい走りますか?
何かスポーツをやっている、趣味や習慣でランニングをやっている等の人は頻繁に長い距離を走るでしょうし、私のように日常生活で走るのは点滅している信号が視界に入ったときと電車の発車音が聞こえた時だけという人もいるでしょう。ちなみに私はつい最近も『アイシールド21』の第1話みたいな華麗なタッチダウン乗車を成功させました。その時の乗客及び駅員さんその他関係者各位にはご迷惑をおかけしたことをこの場を借りてお詫び申し上げます。

閑話休題、日常生活で走ることってそう多くありません。
でも小説の世界は非日常。ましてや推理小説は事件が起きるのですから、現場急行が原則・・・のはずですが、走らない探偵の多いこと多いこと。
野球だって凡打と決めつけて全力疾走を怠るとヒットを損することがあるんです、推理小説だから悲鳴が上がった時点でもう被害者は死んでると決めつけずダッシュすることで救える命があるかもしれない。
なにもヘッドスライディングしろとは言わないので、せめて探偵たるもの移動は駆け足で行って欲しいものです。そうすることで、小説全体に緊迫感が生まれるのです。

2位 弱点

完璧超人よりもどこか欠点のある人の方が愛される、というのは探偵でも同じことです。
前半に続いて登場の御手洗潔ですが、彼もデビュー作の『占星術殺人事件』では卵料理を作るのに失敗していたり若さ故の暴走から始まった犯人探しで奔走しすぎて下柳のような姿になって倒れたりします。これがシリーズを重ねるうちにいつの間にか完璧超人になってしまうのですが・・・私はこの頃の御手洗潔が好きでした。
ポワロといえば機動力の低い巨体、金田一耕助といえば吃音にフケ、と欠点によって特徴付けられる探偵は実に多く、キャラクタの魅力を引き出す便利なものになっています。

また、弱点がちゃんと描かれていることも重要です。例えば一般人が探偵をやる、というのはすでに珍しくなくなりましたが、何も持たざる一般人であるがゆえの無力感のようなものが描かれていると設定に深みが出ます。
私の一番好きな探偵は『女には向かない職業』のコーデリア・グレイなのですが、彼女はまさにその無力感ゆえに愛される存在でしょう。一人で「女には向かない職業」と向きあう健気さこそ彼女の最大の魅力です。

1位 頑張る

これに尽きるのではないでしょうか。
安楽椅子探偵というスタイルがひとつのジャンルを築いていることからも分かるように、事件もたけなわとなった頃に紙面に現れて快刀乱麻を断つがごとく事件を解き明かす探偵というのは「名探偵」のひとつのステレオタイプとなっています。
一方で、多くの探偵は犯人に振り回されながら悩み、事件と格闘しています。
シャーロック・ホームズも金田一耕助も明智小五郎も、彼らが体力と気力を振り絞って真相を追うことで推理小説に冒険小説のエッセンスを加え、これほどまでに愛される作品に昇華させたのではないでしょうか。

私は事件に戸惑い、義憤をいだき、そして真相のために駆けまわる探偵が好きです。
価値観が多様化して「正義」という言葉自体がアナクロニズムの象徴として扱われるようになった今だからこそ、探偵にはたったひとつの正義を持って、そのために戦って欲しいのです。

・・・なあんて真面目なことは一切考えてなくて、単純に探偵と一緒にウンウン唸って事件に振り回されて、一緒に振り回されるうちに感情移入して、そして感情移入すればするほど真相が気になって仕方なくなるのです。
そう感情移入。とっとと真相に気づいておきながらお口チャックする探偵よりも読者と一緒に悩んでくれて読者の代わりに走りまわってくれる探偵の方が、感情移入できるんです。
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